消毒と除菌の違い
消毒
菌やウイルスを無毒化することです。「薬機法」(※1)に基づき、厚生労働大臣が品質・有効性・安全性を確認した「医薬品・医薬部外品」の製品に記されています。
※1 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
除菌
菌やウイルスの数を減らすことです。「医薬品・医薬部外品」以外の製品に記されることが多いようです。「消毒」の語は使いませんが、実際には細菌やウイルスを無毒化できる製品もあります(一部の洗剤や漂白剤など)。
(参考)新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について|厚生労働省
アルコール製剤
アルコール製剤は、エタノールを主成分とし、有機酸などの添加物を加えて作られた製剤です。
■性質
- 無色透明で揮発しやすく、飲めて、酔うという性質(致酔性)がある。
- 適当な条件で反応して、エステルやエーテルなどいろいろな有機化合物をつくることがでる。
- ある種の金属塩、水酸化アルカリ、炭化水素、脂肪酸などを溶解する性質(溶解性)をもつ。
- 水や他のアルコール、エーテル、ケトンその他の有機化合物とよく混和する性質(混和性)をもつ。
- よく燃える性質(燃焼性)をもつ。
- 除菌効果が大きく(除菌性)少量で微生物の増殖を抑える(静菌性)ことができる。
■利点
①安全性
・揮発性が高く、残留が少ない
・無色透明で食品の風味への影響が少ない(※添加する濃度、pHを適切に調整する必要あり)
②簡便性
使用後すすぎの必要がないため作業時間が短く、誰でも簡単に使用できる。
・スプレーすることで広範囲を効率的に除菌できる
・スプレー後はすすぎや拭き取りは不要
・汚れや水分がない場合は、直接噴霧するか、清潔なフキンなどにアルコール製剤を含ませて拭く
③除菌力
アルコール製剤は幅広い微生物への対策として、品質保持・衛生維持に活用できる。
感受性 | 食中毒菌 | その他の微生物 |
---|---|---|
大 (30%)* | 腸炎ビブリオ、サルモネラ、カンピロバクター、大腸菌 | 親油性ウイルス(エイズ、ヘルペス、種痘など)、グラム陰性菌(緑膿菌など) |
やや大 (40%) | 黄色ブドウ球菌 | グラム陽性菌(リステリア、乳酸菌など)、酵母、藻類 |
中 (50%) | アデノウイルス、ロタウイルス、カビ胞子 | |
小 (≻70%) | 親水性ウイルス:ピコナウイルス(ポリオ、ライノ)、パルボウイルス | |
なし | 芽胞(セレウス菌、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌)** | ウイロイド |
**:栄養型(増殖)細菌にはアルコールは有効
■注意点
- 濡れた状態のところにスプレーしない
濃度が低下して期待する効果が得られなくなるため、対象物の汚れや水分がない状態にスプレーする。 - 引火性があるため、火気に注意する
加熱機器の近く等では使用しない。保管時も火気から遠ざけるようにする。 - 揮発性のため、しっかりフタを締めて保管する
保管時は容器のフタを解放せず密閉して保管する。
(参考)
・食品衛生に大活躍!アルコール製剤|日本食品洗浄剤衛生協会
・アルコール製剤|サラヤ株式会社
次亜塩素酸ナトリウム液
次亜塩素酸ナトリウム液は塩素系殺菌剤のひとつであり、食品製造の分野で食品添加物殺菌料として活用されています。大量調理施設衛生管理マニュアルにおいても「加熱せずに供する野菜の殺菌」や「調理機器の殺菌」での使用が記述されています。
■新型コロナウイルス消毒の希釈方法
新型コロナウイルス対策で、調理器具、トイレのドアノブ、便座、衣類等を消毒する場合は、約0.05パーセント濃度の希釈液を使用します。
※※原液濃度が5%~6%の塩素系漂白剤を使用する場合※※
・500㎖のペットボトル1本の水 + 5㎖(ペットボトルのキャップ1杯)の塩素系漂白剤
■ノロウイルス等消毒の希釈方法
①ノロウイルス等のおう吐物、ふん便の処理には、約0.1パーセント濃度の希釈液を使用します。
※※原液濃度が5%~6%の塩素系漂白剤を使用する場合※※
・500㎖のペットボトル1本の水 + 10㎖(ペットボトルのキャップ2杯)の塩素系漂白剤
・2ℓのペットボトル1本の水 + 40㎖(ペットボトルのキャップ8杯)の塩素系漂白剤
②ノロウイルス等の調理器具、トイレのドアノブ、便座、衣類等の消毒には、約0.02パーセント濃度の希釈液を使用します。
※※原液濃度が5%~6%の塩素系漂白剤を使用する場合※※
・2ℓのペットボトル1本の水 + 10㎖(ペットボトルのキャップ2杯)の塩素系漂白剤
■注意点
- 使用時、手袋を着用する
液剤による手荒れ等に配慮し、使用時には必ず手袋を着用する。原液が皮ふに付着した場合は、すぐに洗い流す。 - 酸性洗剤と混ぜない
酸性の洗剤(特にトイレ洗浄剤等の強酸性のもの)と混ぜると、有毒ガスが発生するため、混ぜて使わない。 - 材質への影響
次亜塩素酸ナトリウムの殺菌効果は強力な酸化力によるものであり、その酸化力の強さから、材質によっては対象物を腐食させる。特に金属製品はサビたり変色したりすることがあるため、注意が必要。金属への使用は避けるか、使用した場合はしっかりと水で洗い流す。
※メラミン食器にはNG!! - 有機物(汚れ)の影響
汚れなど有機物が存在していると、次亜塩素酸ナトリウムの殺菌力の元である有効塩素がそれら有機物と反応して消費されるため、殺菌力が低下する。 汚れがある場合は、あらかじめ洗剤で洗浄して汚れを除去してから、次亜塩素酸ナトリウム液を使用する。また、次亜塩素酸ナトリウム液を希釈する容器も、清潔な容器を使用する。 - 時間経過・日光・熱からの影響
次亜塩素酸ナトリウムは、空気、熱、光などに対して不安定で、有効塩素が分解されてしまい殺菌力が低下する。
・使用時に必要量の希釈液を作る。(作り置きをしない。)
・日光、特に紫外線で分解が進むため、保管場所に注意する。
・熱による影響もあるため、高温になる場所での保管はしない。
(参考)
・次亜塩素酸ナトリウム液の作り方|目黒区役所
・次亜塩素酸ナトリウム液|サラヤ株式会社
■「次亜塩素酸ナトリウム」と「次亜塩素酸水」の違い
同じような名前の「次亜塩素酸ナトリウム」と「次亜塩素酸水」ですが、性質は全く異なります。
誤って使用すると健康被害のおそれがあるため、取り扱いには十分な注意が必要です。
次亜塩素酸ナトリウム | 次亜塩素酸水 | |
---|---|---|
使用 | 希釈して | そのまま |
有効塩素濃度 | 100~10,000ppm | 20~60ppm |
化学的性状 | 強アルカリ性 | 弱酸性 |
主成分 | 次亜塩素酸イオン | 次亜塩素酸 |
手荒れ | 多い | 少ない |
「次亜塩素酸ナトリウム」は、アルカリ性で、酸化作用を持ちつつ、原液で長期保存ができるようになっています。ハイターなどの塩素系漂白剤が代表例です。
「次亜塩素酸水」は、酸性で、「次亜塩素酸ナトリウム」と比べて不安定であり、短時間で酸化させる効果がある反面、保存状態次第では時間と共に急速に効果が無くなります。
(参考)
・新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について|厚生労働省
・次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸の違い|株式会社 日本農産
新型コロナウイルス対策として
世界的に新型コロナウイルス感染症が流行しており、感染拡大を防止することが必要となってきています。
新型コロナウイルスへの感染は、ウイルスを含む飛沫が口、鼻や眼などの粘膜に触れること、または、ウイルスがついた手指で口、鼻や眼の粘膜に触れることで起こります。
このため、飛沫を吸い込まないよう人との距離を確保し、会話時にマスクを着用し、手指のウイルスは洗い流すことが大切です。さらに、身の回りのモノを消毒することで、手指につくウイルスを減らすことが期待できます。
アルコールや次亜塩素酸ナトリウム液を効果的に用いることで、新型コロナウイルスをはじめとする様々なウイルスや菌の感染拡大を防止していきましょう!