ノロウイルス

ノロウイルスの潜伏期間は1日~2日で、主症状は吐き気、嘔吐、下痢、その他の症状として、腹痛、頭痛、発熱、悪寒、筋痛、咽頭痛、倦怠感を引き起こすと言われています。
一般的には2~3日で回復しますが、 症状回復後でも1~2週間、まれに1ヶ月にわたり糞便中にウイルスを排出し続けます。そのため、二次感染にも注意が必要となります。
また、感染しても発症しない場合があり、このような感染者からの感染拡大に注意が必要です。

★予防対策

◇ 調理従事者の予防対策
・調理前、用便後の手洗いを確実に十分行うこと。また、用便後、手洗いの前にトイレのドアノブ等に触れないこと。
・ノロウイルス汚染の可能性のある二枚貝等の食品は、中心部まで85℃、1分間以上の加熱を行うこと。
・加熱済みの食品は、素手で扱わないこと。ゆでた野菜を水冷する場合は、特に注意すること。
・調理器具等は、洗浄・消毒を十分に行うこと。
・嘔吐した、あるいはノロウイルス感染者や感染が疑われる者が使用した食器は、調理室に持ち込む前に、煮沸あるいは次亜塩素酸ナトリウム(200~1,000ppm)で消毒を行うこと。
・ノロウイルスの流行期には、加熱後、冷却し混ぜ合わせを行う和え物等のメニューは、避けること。
・ノロウイルス流行期には、可能な限り加熱した食品を食べること。
・家族を含め健康管理に努めること。

◇ 感染者からの二次感染防止
・感染者の便や嘔吐物に近づかない、触れないこと。
・便や嘔吐物で汚染された衣類等の片付けには、ビニール手袋、マスクを着用すること。
・便、嘔吐物はペーパータオル等で覆い、次亜塩素酸ナトリウム(1,000ppm)で消毒を行うこと。その際には自身の感染を防ぐため、エプロン、マスク、靴カバー、ビニール手袋を着用して行うこと。
・便、嘔吐物等で汚染された床、トイレのドアノブ等は、次亜塩素酸ナトリウム(1,000ppm)を含ませた布で消毒すること。
・便や嘔吐物に触れた時、処理した後には、手洗いを十分に行う。また、うがいも忘れずに行うこと。

サルモネラ属菌

サルモネラ属菌は鶏などの家禽類や牛、豚などの家畜、猫や犬、鳥、爬虫類などペットなど幅広く様々な動物の体内に生息し、高湿度下や水分活性が高い状況(鶏肉等の食品上)、及び35℃~43℃の温度帯で活発に増殖します。
サルモネラ属菌が付着した食品を摂取すると通常8〜48時間の潜伏期間の後に悪心や嘔吐の症状が表れ、数時間後に腹痛や下痢などの症状が表れます。
下痢の症状は1日数回から十数回程度で、3〜4日持続しますが、1週間以上症状が続く場合もあります。小児や高齢者の場合、脱水症状により命に係わる深刻な状態になることがあるため、注意が必要です。

★予防対策

◇ 食肉類、卵などの消費期限表示を確認すること。
◇ 食肉類、卵などを取り扱う器具、機材は専用とすること。
◇ 食肉類、卵などを取り扱う場合には、使い捨て手袋を装着すること。
◇ 食肉類、卵などは、10℃以下で低温管理すること。
◇ サルモネラは70℃、1分間の加熱で死滅させることができるので、食品の加熱は、75℃、1分間以上を確実に行うこと。
◇ ネズミ、ハエ、ゴキブリ等衛生害虫の駆除を徹底すること。

カンピロバクター

カンピロバクターは、酸素が少しある環境を好み、酸素が十分にある通常の大気や、逆に酸素が全くない環境では増殖できません。また、増殖できる温度域は、30℃から46℃です。
主な生息場所はウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、イヌ、ネコ、ハトなどの動物の消化管内で、これらの動物の糞便から検出されることがあります。
潜伏期間は2日から7日(平均2日から3日)と他の食中毒菌に比較して長いのが特徴です。
主な症状は、下痢、腹痛及び発熱で、他に倦怠感、頭痛、めまい、筋肉痛などが起こることもあります。初期症状は風邪と間違われることもあります。

★予防対策

◇ 食肉類、卵などの消費期限表示を確認すること。
◇ 食肉類、卵などを取り扱う器具、機材は、専用とすること。
◇ 食肉類、卵などをを取り扱う場合には、使い捨て手袋を装着すること。
◇ 食肉類、卵などは、10℃以下で低温管理すること。
◇ 生食肉、卵は、調理済みの食品とは別々に保管し、接触を避けること。
◇ カンピロバクターは70℃、1分間の加熱で死滅させることができるので、食品の加熱は、中心温度75℃、1分間以上を確実に行うこと。

ヒスタミン

ヒスタミン食中毒の原因となる主な食品は、「ヒスチジン」というアミノ酸を多く含む赤身魚(マグロ、ブリ、サンマ、サバ、イワシ等)やその加工品です。ヒスチジンは細菌の酵素の働きでヒスタミンとなるため、ヒスチジンを多く含む食品を常温で放置する等、不適切な管理を行うとヒスタミン産生菌が増殖し、ヒスタミンが生成されます。
なお、魚や加工品のほか、ワインやチーズ等の発酵食品にも含まれることが知られています。
ヒスタミン食中毒の症状は、食べた直後から1時間以内に、顔面、特に口の周りや耳たぶが紅潮し、頭痛、じんましん、発熱などです。

★予防対策

ヒスタミンは、悪臭や食材の見た目の変化を伴わず、しかも加熱によって細菌は死滅しますが、生成されたヒスタミンは分解されないので、食中毒を防止するためには、以下の予防対策が重要です。
◇ 赤身魚などの流通や保存時の温度管理(納入時の温度や再凍結の有無等)及び鮮度を確認し、検収簿に記録すること。
◇ 鮮度が悪いものは使用しないこと。
◇ 調理場においては、室温での放置を避け、冷蔵庫や冷凍庫で保管すること。
◇ 検食などにおいて、唇や舌先にピリピリした刺激を感じた場合は、速やかに提供を中止すること。

腸管出血性大腸菌O157

腸管出血性大腸菌O157は、牛などの家畜が保菌している場合があり、これらの糞便に汚染された食肉からの二次汚染により、あらゆる食品が原因となる可能性があります。過去には、牛肉及びその加工品、サラダ、白菜漬け、井戸水等による食中毒事例があります。
潜伏期間は平均4~8日で、症状は激しい腹痛で始まり、数時間後に水様下痢を起こすことが多く、1~2日後に血性下痢がみられます。血性下痢は、ほとんどが血液で、糞便を含まないことがあります。また、溶血性尿毒症症候群(HUS)や、脳障害を併発することがあります。HUSは、下痢が始まってから、約1週間後に、赤血球の破壊による、溶血性貧血、血小板の減少及び急性腎不全などの症状が現れます。

★予防対策

O157は加熱や消毒薬により容易に死滅しますので、通常の食中毒対策を確実に実施することで十分に予防できます。
◇ 食肉類を取り扱う器具、機材は専用とすること。
◇ 食肉類を取り扱う場合には専用のエプロンを着け、使い捨て手袋を装着すること。
◇ 食肉類は10℃以下で低温管理すること。
◇ 食肉類は中心部までよく加熱すること(75℃、1分間以上)。
◇ 生食肉と調理済みの食品は別々に保管し、接触を避けること。
◇ 野菜類はよく洗浄し、原則として加熱すること。

★参考文献
 文部科学省>調理場における衛生管理&調理技術マニュアル>第6章食中毒病因物質の解説
 https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1306690.htm