飲食店・ホテル・旅館や、中小規模集団給食施設のHACCP(HACCPの考え方を取り入れた衛生管理)における「一般衛生管理」とは、HACCPを構築する為の土台となる基礎的な衛生管理のことです。
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理とは、 厚生労働省がHACCPの制度化に伴い、新たに設けた日本独自のHACCP基準で、HACCPの考え方を踏襲しながらも、一般飲食店や小規模事業者が取り組みやすい簡易的なHACCPです。 |
具体的には、以下の項目の衛生管理を行います。
① 原材料の受入の確認
② 冷蔵・冷凍庫の温度の確認
③-1 交差汚染・二次汚染の防止
③-2 器具等の洗浄・消毒・殺菌
③-3 トイレの洗浄・消毒
④-1 従業員の健康管理・衛生的作業着の着用など
④-2 衛生的な手洗いの実施
これらの管理項目について、
「なぜ必要なのか」を理解し、
「いつ」行い、「どのように」管理し、
「問題があったとき」はどうするかの対応を決めます。
これらを文書化したものが、「一般衛生管理計画書」となります。
① 原材料の受入の確認
【なぜ必要なのか】
汚染されている原材料などは、受入の段階で極力排除するため。(腐敗しているもの、包装が破れているもの、消費期限が過ぎているもの、保存方法が守られていない原材料などは有害な微生物によって汚染されている可能性があります。)
【いつ】
例)納入時
【どのように】
例)外観、におい、包装の状態、ラベル表示(アレルゲン、消費期限、保存方法)、品温などを確認する。
【問題があったとき】
例)納入業者へ連絡し対応 (返品、交換等) してもらう。
② 冷蔵・冷凍庫の温度の確認
【なぜ必要なのか】
温度管理が十分でないと、食品が劣化・腐敗したり、有害な微生物が増殖する可能性がある為。
【いつ】
例)始業前、業務終了後
【どのように】
例)温度計で庫内温度を確認する。(冷蔵:10℃以下、冷凍:-15℃以下)
【問題があったとき】
例)原因を確認し、再発防止策を講じる。故障の場合はメーカーに修理を依頼する。
③-1 交差汚染・二次汚染の防止
【なぜ必要なのか】
保管や調理の作業中に、生肉や生魚介類等を扱った調理器具等により
他の食品へ汚染が広がる可能性がある為。
【いつ】
例)作業中
【どのように】
例)まな板、包丁などの調理器具は、肉や魚などの用途別に使い分ける。
調理器具は、都度に十分に洗浄し、消毒する。
【問題があったとき】
例)使用時に、まな板や包丁等の調理器具に汚れが残っていた場合は、中性洗剤で再度洗浄し、消毒する。
③-2 器具等の洗浄・消毒・殺菌
【なぜ必要なのか】
調理器具に汚れが残っていると、他の食品に有害な微生物の汚染が広がる可能性がある為。
【いつ】
例)使用後
【どのように】
例)使用の都度、まな板、包丁、ボウルなどの器具類を洗浄し、消毒する。
【問題があったとき】
例)使用時に汚れが残っていた場合は、中性洗剤で洗浄、または、すすぎを行い、消毒する。
③-3 トイレの洗浄・消毒
【なぜ必要なのか】
トイレは様々な有害な微生物(ノロウイルス、腸管出血性大腸菌など)に汚染される危険性が最も高い場所で、常に清潔に保つ必要がある為。
【いつ】
例)始業前
【どのように】
例)トイレの洗浄・消毒を行う。便座、水洗レバー、手すり、ドアノブは特に入念に消毒する。
【問題があったとき】
例)業務中にトイレが汚れていることに気づいた場合は、清掃、洗浄、消毒を行う。
④-1 従業員の健康管理・衛生的作業着の着用など
【なぜ必要なのか】
ノロウィルス等に感染している従事者の手指などを介して食中毒が発生する危険性があります。また、手指に切り傷などがある場合や汚れたままの作業着の着用、装飾品を身に着けた状態での調理作業などは、食品が有害な微生物に汚染されたり、異物混入の原因になる可能性がある為。
【いつ】
例)始業前、作業中
【どのように】
例)従業員の体調、手指の傷の有無、身だしなみの確認を行う。
【問題があったとき】
例)下痢などの消化器系の症状がある場合は、調理作業に従事させない。また、手に傷がある従業員には、絆創膏をつけ、上から手袋を着用し、作業させる。
④-2 衛生的な手洗いの実施
【なぜ必要なのか】
手には有害な細菌やウイルスが付着していることがあり、これらによって食品を汚染する可能性がある為。
【いつ】
例)トイレ使用後、厨房に入る前、盛り付けの前、作業内容変更時、食材(肉、魚)を扱った後、金銭を扱った後、清掃作業を行った後
【どのように】
例)衛生的な正しい手洗いを行う。
【問題があったとき】
例)作業中に従業員が必要なタイミングで手を洗っていない、または洗い方が不十分であることを確認した場合には、直ぐに衛生管理の再教育を実施する。
飲食店によっては、
以下の項目の管理も重要になる場合があります。
施設・設備の衛生管理
【なぜ必要なのか】
飲食店内・厨房の調理環境は、カビの発生やほこりによる食品への汚染、
ねずみやハエ、ゴキブリなどの衛生害虫等の発生・混入などを起こさない
よう清掃を徹底する必要がある為。
【いつ】
始業前、業務終了後
【どのように】
飲食店内、施設設備の清掃を行う。
【問題があったとき】
飲食店内 ・厨房の清掃が不十分であることを確認した場合には、直ぐに清掃を行わせ、従業員の清掃への意識向上に努める。
そ族・昆虫対策
【なぜ必要なのか】
そ族(ネズミ)や害虫などが飲食店内・厨房の調理環境内へ侵入したり発生することで、二次汚染や異物混入を起こさないようにする為。
【いつ】
月1回
【どのように】
駆除作業を実施する(薬剤の散布、捕虫ペーパーの交換)。
【問題があったとき】
そ族・昆虫を見つけた時には、可能な限り駆除し、繁殖場所及び侵入経路を確認し、駆除作業を実施する。
廃棄物の取扱い
【なぜ必要なのか】
廃棄物(ゴミ、排水等)によって、調理環境汚染しないようにする為。
【いつ】
業務終了後
【どのように】
廃棄物の管理状況を確認。
【問題があったとき】
ゴミ等が散乱していたり、悪臭が発生した場合は、周囲を清掃すること。