米NASAが考案した衛生管理の方法

HACCP(ハサップ)とは、アメリカのNASAが考案した衛生管理の方法です。
万一、宇宙空間で食中毒が発生してしまうと治療もできず、死活問題であることから、食中毒を起こさない為の高度な衛生管理が必要でした。
そこで、NASAが考案したのがHACCPです。

HACCPは、Hazard Analysis and Critical Control Point のそれぞれの頭文字をとった略称で「危害要因分析に基づく重要管理点」と訳されています。
原料の入荷・受入から製造工程、さらには製品の出荷までのあらゆる工程において、発生するおそれのある生物的・化学的・物理的危害要因をあらかじめ分析(危害要因分析)します。
製造工程のどの段階で、どのような対策を講じれば危害要因を管理(消滅、許容レベルまで減少)できるかを検討し、その工程(重要管理点)を定めます。
そして、この重要管理点に対する管理基準や基準の測定法などを定め、
測定した値を記録します。
これを継続的に実施することが製品の安全を確保する科学的な衛生管理の方法です。

この手法は、国連食糧農業機関(FAO: Food and Agriculture Organization)と世界保健機関(WHO: World Health Organization)の合同機関であるコーデックス委員会から示され、各国にその採用を推奨している国際的に認められたものです。

HA(Hazard Analysis)危害要因の分析(微生物、異物等)
CCP(Critical Control Point)重要管理点(加熱工程における温度、時間等)

HACCPに基づく衛生管理(基準A)

HACCPに基づく衛生管理とは、CodexのHACCP「7原則12手順」に基づいた国際標準の衛生管理のことです。
通常、HACCPと言ったら国際標準の「HACCPに基づく衛生管理(基準A)」のことを指すのが一般的です。
日本国内では、以前、「HACCPに基づく衛生管理」のことをHACCPの「基準A」という風に呼ばれていました。

HACCPに基づく衛生管理では、大きく分けて2つの側面から生物的、化学的、物理的、という3つの危害要因(ハザード)を管理します。

1.製造環境

食品衛生法で定められている、「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」の第2食品取扱施設等における衛生管理の事項が管理項目となります。 施設状況は、それぞれの企業や施設ごとに違いますので自分たちの施設の現状を良く見極めて管理するべき事項を決めていく必要があります。完全でなくてもその状況を補う作業手順を明確にし、管理することでHACCPを導入することは容易に可能となります。

(参考)食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)

2.製造工程

原料から持ち込まれる3種類の危害要因(ハザード)を、調理・加工の規格を定めて運用管理する手順(手法) を構築します。ただし大切なことは、さまざまな工程における基準値の設定根拠は妥当であるという客観的な証明ができていることが必要です。

HACCP導入のための7原則12手順とは

手順1HACCPチームの編成 
手順2製品についての記述 
手順3使用についての確認  
手順4製造工程一覧図、施設の図面及び標準手順書の作成  
手順5製造工程一覧図の現場での確認  
手順6危害要因の分析 原則1
手順7重要管理点(CCP)の決定 原則2
手順8管理基準の設定 原則3
手順9モニタリング方法の設定  原則4
手順10改善措置の設定 原則5
手順11検証方法の設定 原則6
手順12記録の保持 原則7

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(基準B)

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理とは、
厚生労働省がHACCPの制度化に伴い、新たに設けた日本独自のHACCP基準で、HACCPの考え方を踏襲しながらも、一般飲食店や小規模事業者が取り組みやすい簡易的なHACCPです。

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理は、
一般衛生管理を基本として、業界団体が作成する手引書を参考にしながら、必要に応じて重要管理点(CCP)を設けて管理すれば良いとされています。

目的は「衛生管理の見える化」

飲食店や販売店など小規模も含めた事業者にもHACCPの考え方を導入することによって、衛生管理が見える化され、より効果的な衛生管理を行うことができると考えられています。衛生管理の見える化とは、手洗い、清掃、従業員の 健康管理など一般衛生管理に関する取り組みと、メニューに応じた管理方法を定めた衛生管理計画を作成し、実行、記録・確認することです。

HACCP制度化の背景

これまでHACCPは、主に食品製造業の事業者に整備が進められてきましたが、
一般飲食店を含む全ての食品事業者においても、HACCPの導入が義務付けられることになりました。

HACCP制度化の理由としては、
・食中毒の60%は、飲食店で発生している
・高齢化人口の増加に伴って、食中毒リスクが高まっている
・近年、先進国を中心に着々とHACCPの義務化が進められている
(輸出の必須要件になりつつある)
などがありますが、
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を機に日本の食の安心安全を国内外にアピールしたいということもあると思います。

HACCPの今後について

現在、日本の人口は急速に減少していますが、一方で外国人の労働者人口は、年々増加しており、国際化が進んでいます。食品製造の現場においても、外国人の従業員を見かけることが多くなりました。また、訪日外国人観光客も年々増加しており、食品衛生管理の水準が国際的に見ても遜色のないことを、国内外に示していく必要性が高まってきています。こうした状況を考えれば、国際標準であるHACCPの制度化は当然の流れなのではないかと思います。

現時点では、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(基準B)」は、国際標準ではありませんが、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理は、言わば初めてHACCPに取り組む一般飲食店および小規模事業者の為の救済措置であり、いずれは規模の大小に関わらず、全ての食品事業者が、国際標準である「HACCPに基づく衛生管理(基準A)」を取り組まなければならない日もやってくるのではないでしょうか。




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